●「葛藤」は「対立」じゃ!
ブンコ「えっと、面白い物語って例えばどんなの?」
ぴこ蔵「まず、その逆を考えてみようか。
『誰も楽しめない話』があるとすれば、
それは例えば、朝礼の時の校長先生の長話じゃ」
ブンコ「げっ、それ聞いただけでもう貧血気味だ!」
ぴこ蔵「退屈じゃからなー。サスペンスもないし、ロマンスもない。
大体結論もわかっておるし、ギャグも言わん」
ブンコ「その上、お説教されるんだもんなー」
ぴこ蔵「この手の話と対極にあるのが「面白い物語」じゃな。
ドキドキはらはら、次はどうなるの?
あの人は誰のことを愛しているの?
そんな一瞬たりとも気が抜けない話じゃ。
手っ取り早く言ってしまえば、
それは『ドラマチックなストーリー』のことじゃな」
ブンコ「ドラマチックって具体的にどういうこと?
どうすればドラマチックになるのさ?」
ぴこ蔵「小説とかシナリオの書き方を解説した本を読むと、
『ドラマとは葛藤である』と書いてあるのを
お主もよく目にするはずじゃ。
つまり、物語をドラマチックにするためには
『葛藤』とやらを持ち込めばええのじゃ」
ブンコ「『葛藤』とか言われたって全然わかんないよー。
画数の多い漢字を見ると、頭がぼやーっとしてくるんだよねー」
ぴこ蔵「そうか。するとお主、
『主人公の成長や変化の過程における葛藤を書け!』
なんて言われると頭がフリーズしてしまうじゃろな」
ブンコ「もうサイアクー!
なんか葛藤って夏休みの朝顔観察っぽいよねー」
ぴこ蔵「いいところを突いたぞ!ちなみに辞書を引いてみると…
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【葛藤(かっとう)】
〔もつれ合う葛(かずら) や藤の意から〕
(1) 人と人とが譲ることなく対立すること。争い。もつれ。
(2) 〔心〕 心の中に相反する欲求が同時に起こり、
そのどちらを選ぶか迷うこと。コンフリクト。
(3) 禅宗で、解きがたい語句・公案、また問答工夫の意。
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まさしくもつれあうツルとツタのことじゃ。
ありゃりゃ、禅問答まで出てきおったぞ。
葛藤と言う概念はどうも抽象的で扱いにくいんじゃのう」
ブンコ「葛藤ってさー、意味ぐらいはわかるけど、
視覚的にイメージしづらい言葉だよね。
なーんか4畳半で一人ぐじぐじ反省するって感じだし」
ぴこ蔵「確かに葛藤のヴィジュアルはなかなか思いつかんなあ」
ブンコ「だいたい、主人公が葛藤する様子なんて
どうやって描写すればいいのさ?
髪の毛をかきむしりながら独り言でもゆーのか?
口元をゆがめて手も少し震わせてやろーかなー。
違うなー。そーゆーことでもないなー。
ポーズかな?
腕を曲げて腰に当ててクイクイッと。
そんな葛藤はやだなー。
こりゃいかん。無理だ無理だ。
あたしに主人公の葛藤なんて描けないよ。
老師、またしても頭がぼやーっとしてきた」
ぴこ蔵「それは、一人で葛藤すると思うから難しいんじゃよ。
心理描写しようなどと思ってはいかんぞ。
ありゃつまらん。エンターテインメントで「内部の葛藤」は止めたほうがイイ。
特に、映像化を考えておるのならおすすめできん。
名手ならともかく、おぬしがやっても
読者に迷惑かけるだけなのじゃ。
こんな時、よいこは頭を使うのじゃ。例えば…
人と人とが争う様子を書くのはイメージしやすいじゃろ?
内面の葛藤も擬人化すればいいのじゃ
誰か主人公が葛藤する相手を登場させればいい。
考え方をこう変えてみるのじゃ!
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「ドラマとは主人公の葛藤から生まれる」
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「ドラマとは主人公が他の登場人物と葛藤することで生まれる」
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ブンコ「うーん、まだ「葛藤」の意味がわかりにくいな」
ぴこ蔵「ならば、お主にもわかりやすい言葉に置き換えてみよう。
それは辞書の中にも出てくる「対立」という言葉じゃ。
すると、こうなる。
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↓↓↓↓↓↓↓↓↓
「ドラマとは主人公が他の登場人物と対立することで生まれる」
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ブンコ「なるほど! ってことはつまり、
手っ取り早く話をドラマチックにしようと思ったら
主人公を登場人物とケンカさせればいいわけだ。
でも、ホントかなあ?」
ぴこ蔵「嘘だと思ったら、ちょっと小手調べに、
うまく会話がはずまないところを
思い切ってちょっとケンカ腰の会話にしてみるのじゃ」
ブンコ「どんな感じかやってみてよ」
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