ブンコ 「私の名前はブンコ。作家になりたい女。
でも、なかなか作品が書けない。
書き始めても最後までフィニッシュできない。
どうしてなんだろう?
やっぱり才能がないのか…?
文章教室に通おうか?」
ぴこ蔵 「そんなことはないぞお」
ブンコ 「あんただれ?」
ぴこ蔵 「わしはあらすじのプロ、ぴこ山ぴこ蔵じゃ!
日本中の悩める書き手を救うためにやってきたのじゃ!」
ブンコ 「あんたいったい何を言って……
たった今、弟子にして下さい!」
ぴこ蔵 「すごい食いつきじゃな」
ブンコ 「だって本当に悩んでるんだよー。
だれでもいいから助けて!」
●かっこいいオープニングの罠
ぴこ蔵 「それではさっそく最初の質問じゃ!
お主は物語を作るとき、
まずかっこいいオープニングから書き始めておらんか?」
ブンコ 「もちろん! 最近の自作でもお気に入りのファンタジーは
その赤銅色の龍は、この星の一番高い場所にある万年雪の下で、永遠にも似た眠りを静かにむさぼっていた。
から始まるの! なんか凄いお話がはじまりそうでしょ」
ぴこ蔵 「ほほう! 」
ブンコ 「ハードボイルドなサスペンスだってあるんだよ。
朝焼けが始まった頃、店の駐車場に一台の車が滑り込んできた。
まだ暗いというのにスカーフとサングラスで顔を隠した女が運転席のウインドウを開けて私に合図した。私は営業用の笑顔で車に近づくと女が話し掛けてくるのを、そしてサングラスの奥にある美しい眼を見せてくれるのを待った。しかし女はサングラスを外すよりも先に、ハンドバッグの中から拳銃を取り出した。
なーんて感じの、そりゃもうかっこいい、
マイ・フェバリット幕開け。
自分の中に湧いて出たイメージに陶酔してしまう瞬間だよ。
もうこれで一本書けたような気になってしまうのよん」
ぴこ蔵 「実はそれが失敗の原因なんじゃよ」
ブンコ 「ギクッ!」
ぴこ蔵 「そういうのってオープニングのインスピレーションは強烈でも
まず長続きすることはないからのう。
その場の雰囲気にハマッて始めた恋愛と一緒じゃよ。
お主は自分の影に恋をしておるのじゃ。うひょひょ!」
ブンコ 「ギクギクギクッ! 何てこと言うんだアンタは!」
ぴこ蔵 「ちなみにお主、その小説、最後まで書き上げたのか?
いや、半分ほどでも書いたかな?」
ブンコ 「か、書いてません…」
ぴこ蔵 「なぜ書かないのじゃな?」
ブンコ 「だって、刺激的なオープニングが終わると、
主人公がさっそく途方にくれちゃって。
次に何をすればいいのかわかんないんだもん」
ぴこ蔵 「それはそうじゃろう。
お主が決めておらんのじゃから」
ブンコ 「げげっ!」
ぴこ蔵 「そんなタイプの人は書く順番を変えることじゃよ」
ブンコ 「書く…順番?」
ぴこ蔵 「よーし、それでは教えてあげよう!」
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