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2008年1月12日土曜日

ぴこ蔵の本棚「シャドー81」



たまには好きな本のことでも語るかのう。
シャドー81」には、どんでん返しにびっくりして本を取り落とした思い出があるのじゃ。

戦場や冒険や空中や海上や、サスペンスはもちろん
人生の苦さやユーモアさえも兼ね備えた、大人味の大活劇なのじゃ。
これをエンタテインメントの最高傑作と言わずして何と呼ぼう。

最初から最後まで怒涛の展開が続くので、
本当に途中で止めるのが難しい。

中でも、ワケあって太平洋を船で行くくだりでは
まるで自分自身が大航海しているような気持ちになり
世間の雑事から解き放たれた至福のひとときを味わった。

しかし、わしはあえて途中で無理やり何度か中断し、
水面に浮かび上がって息を整えつつ、
この物語が読める幸せをしみじみ噛み締めたもんじゃ。

読み終わるのがもったいないのじゃが、
一刻も早く結末が知りたい。
そんな分裂した気分にさせてくれた数少ない作品の一つ。

この作品に関しては舞台やジャンルなどどうでもよろしい。
なんせ最高傑作である。
とにかくこれを読んでもらわんことには
面白い本の話なんかできっこねえのである。
どんな本なんだろう? と考えている間に
一刻も早くシャドー81を読んで欲しいものじゃ。

2008年1月8日火曜日

型を知って型を破る

型破りな物語の「型」を知る

――神は細部に宿ると言う。
  小説はディテールを書き込むことで「人間」を描写する。
  「人間」さえ書けていれば、
  トリックやどんでん返しやオチなどは必要ない。
  「人間」さえ描けていれば、それだけで充分面白い。

  ただ、それを書くのがむずかしいのだ。
  長い地道な描写の修練と、人間観察の手間、
  そしておそらくは文章の才能が必要だ。

  ところが、書き手には常に時間がない。

  応募したい大賞の締め切りまであと3ヶ月。
  あるいは、発表会まであと1ヶ月。
  もしくは、オリジナルストーリーのプレゼンが明日の朝に迫っている。

  正論には納得するが、実際のところ手間はかけられない。
  締め切りは才能以前の問題だ。
  一刻も早く、誰が読んでも面白いストーリーを
  ひねり出さねばならない状況なのだ――――


そんなあなたのために「面白い物語の型」をテンプレートにしました。
どんでん返しという娯楽作品には欠かせない技術を中心に据えて、
読者がついつい引きずり込まれるストーリー展開の土台を作りました。

これが創作法の全てだなんて言いません。
ただし、これを知っていると知らないとでは、随分効率に差が出ます。
「型」というのはそういうものです。

これまで、その強烈な独自性ゆえに日の目を見ることのなかった
あなたの悪魔の如き才能は、型に嵌めることでついに完成するのかもしれません。

むしろ型に嵌めることで、これまであなたを逆に狭い枠に閉じ込めていた
ユニークなるがゆえの「非客観性」や「わがまま」の排除が可能になり、
はじめて他者と感覚を共有でき、あなたの独自性が伝わる…。
そう、「型」こそがその輝きを引き出す唯一の鍵かもしれないのです。

天才作曲家モーツァルトは「型」を駆使して
数多くの名曲を生み出し続けました。

例えば「ジュピター音型」(C→D→F→E)というものがあります。
古くから多くの作曲家に使われていた「型」ですが、
モーツァルトも大のお気に入りでした。

この「型」は、8歳で作曲された交響曲第1番をはじめ、
生涯を通じてさまざまな楽曲に使われ、
最後の交響曲である交響曲第41番『ジュピター』にも用いられています。

短い人生にたくさんの楽曲を作り出した天才の秘密は
「型」を使いこなすことにあったのです。

「型」を知り抜き、踏襲することによって、
「自分が表現したいイメージ」の核心にすばやく到達し、
しかもその「型」を破っていく。

貴重な時間を消費して「よくある話」を作ってしまう愚を避けるには、
逆に「よくある話」のパターンを土台にして
自分だけの「どこにもない話」に変えていくことです。

最も悲惨なのは、古今東西のストーリーで頻繁に使われている
代表的な「型」を知らないこと。
そして、長い歴史を通じて人類が築き上げてきた物語の基礎工事たる
「型」の合理性に無自覚なこと。

誰もが知っているおなじみのパターンを応用して、
誰も見たことのない世界を無尽蔵に生み出すには
どこをどう使えばいいのか?
何に注意して書けば能率的なのか?

「型」を軽んじてはいけません。
それは神話にも登場するほどの歴史を持つ、
何千年にも及ぶ人類の遺産です。

新しいものを生み出すためには伝統を知らなければなりません。
いったん型に嵌めることで、初めて反発が生まれ、
型を破ることができるのです。

試してみましょう。
気に入らなければ使わなければいいのです。
「型」を知ることにリスクはないはずです。


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2008年1月5日土曜日

面白い物語創作講座 基礎編09 欠落感を探せ

●欠落感を探せ

ぴこ蔵「物語を面白くするには黄金の基本パターンがある。
    もう一度聞いておくか。
    ブンコちゃんよ、それはなんじゃ?」

ブンコ「『目的を追う主人公が邪魔する敵と戦う』」

ぴこ蔵「そうじゃな。ならば、
    この【 主人公の目的 】というやつを
    お主はどうやって決めておる? 」

ブンコ「え? 急にそんなこといわれても…。
    だってあたし自身の人生の目的も
    まだ決まってないのにさー」

ぴこ蔵「うーむ、さすがミス行き当たりばったりじゃな。
    お主の爆笑人生に関してはわしにはどうしようもないが
    主人公の目的なら決めるヒントがあるのじゃ!」

ブンコ「師匠、ぜひ教えておくんなまし!
    どうすれば大金持ちになれますか? 少々ヤバイ話でも可」

ぴこ蔵「だからお主の金目当ての犯行についてはわしゃ知らんがな。
    しかーし!
    【 主人公の目的 】を決めるにあたっては
    実はとっても簡単でうまいやり方があるのじゃ!」

ブンコ「知りたーい! 教えて!」

ぴこ蔵「よいか、よく聞くのじゃぞ。
    【 主人公の目的 】を決めるなら
    『欠落感』を探すのじゃ!」

ブンコ「ケツラクカン? 」

ぴこ蔵「もしくは欠如とも言う。
    お主の物語世界で、
    これだけはなくなっては困るという
    大切なものがなくなることじゃ」

ブンコ「大切なものか…」

ぴこ蔵「例えばお主がいま一番大切にしているものはナンじゃ?」

ブンコ「なんだろ? 携帯電話かな」

ぴこ蔵「そしたらその携帯電話が、
    ある日突然、なくなってしまうのじゃ。
    お主、どうする?」

ブンコ「草の根分けても探す!
    なくなったら絶対マズイ!」

ぴこ蔵「な? さすがのナマケモノもたまらず行動に移る」

ブンコ「かーっ! ムカツクー!
    でもそんなことしてる場合じゃない。
    携帯はどこ? どこ行ったーっ!」

ぴこ蔵「それと一緒じゃ。主人公も必ずそれを取り戻すために
    行動を起こすはずじゃ。
    ないと困るから取り戻しにいく。
    これこそが最も手っ取り早い動機付けじゃ」
     
ブンコ「はっ!? 
    なるほど。
    つまり、主人公に目的を持たせたかったら、
    主人公の大切なものを奪っちゃえばいいわけ?」

ぴこ蔵「例えば、健康やお金じゃったり、家族の平和じゃったり。
    なんぼでも出てくるじゃろ?」

ブンコ「人生観が出てきて深くなりそうだよね」

ぴこ蔵「深すぎて収拾がつかなくなる。
    じゃからこれ以上は語らんぞい。
    とにかく、主人公を動かすなら
    『大切なもの』を取り上げるに限るのじゃ!」

ブンコ「目的を生み出すのは『欠落感』かー!?」

ぴこ蔵「わかったらさっさと主人公から大切な何かを奪い取るのじゃ!」

ブンコ「さすが師匠! 何につけても話が早いぞ!」

【基礎編 終わり】

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面白い物語創作講座 基礎編08 面白い物語の基本形

    ●面白い物語の基本形

ぴこ蔵「さて、面白いストーリーにするためには、
    主人公が目的を持っていることと、
    障害物があることが必要じゃということがわかった。
   
    それでは、その二つを話の流れに取り入れると
    どんな風になるかな?」

ブンコ「主人公はある目的を持っている。
    当然その目的を達成しようとがんばるよね。
    ところが、それを邪魔する奴がいるわけ。
    主人公はそいつと戦うことになる…」

ぴこ蔵「うむ、つまりこれが『対立』ってやつの正体なのじゃ」

ブンコ「わかりましたー!
    主人公は『目的達成』のために
    『障害物』と『対立』するわけだ!」

ぴこ蔵「そういうことじゃ。
   『ドラマとは、主人公が目的達成のために障害物と戦うこと』
    つまり、面白いストーリーにするには、
    主人公が目的のために邪魔者と戦うべし!」
   
ブンコ「師匠、不肖アタクシめがまとめさせていただいちゃうよ。
 -----------------------------------------------------
   
   <面白いストーリーの基本形>
  ★目的を達成したい主人公が、それを邪魔する敵と戦う
   
 -----------------------------------------------------

    これでどう?」

ぴこ蔵「上出来じゃ。
    お主が書くべき『面白いストーリー』の姿が
    ますますわかりやすくなってきたのう!
 
    特に、とりあえず初めて物語を書くのなら、
  『ある目的を達成したい主人公がそれを邪魔する敵と戦う話』が
    おすすめじゃ! 基本中の基本じゃからな」
   
ブンコ「よーし、さっそく主人公の目的を決めなきゃなー! 
    でも、どうやって? 」

ぴこ蔵「焦るでない焦るでない!
    お主にも簡単に「主人公の目的」を決める方法があるのじゃ!
    じゃが、そのためにまず知らねばならぬことがある!!」
    その前に、この章のまとめなのじゃ!
  
     
 ★面白いストーリーの基本とは
   
 「ある目的を達成したい主人公が、それを邪魔する敵と戦う」物語


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2008年1月4日金曜日

面白い物語創作講座 基礎編07 主人公には「目的」と「苦難」を!

●主人公に目的はあるか
ブンコ「ぴこ蔵師匠、主人公の『目的』っていうのは
    どーゆーこと?」
   
ぴこ蔵「主人公がやらねばならんことであり、
    主人公の存在理由そのものじゃ。
    意味もなく外出したり、暇なのでパチンコに行ったりする。
    そんなヒマは主人公にはありゃあせん。
    何も変わらないなんてもってのほかじゃ。
    主人公たるもの読者の貴重な時間を浪費することは許されん。
    パチンコひとつやるにも確固たる動機が必要なのじゃ!」
ブンコ「き、厳しいんだねー、主人公の立場って」
   
ぴこ蔵「当たり前じゃ。主人公は何かを為すために存在しておる。
    常に「何をする」かをはっきり決めてやらねばならん」
   
ブンコ「前回の実例(2)の主人公の場合は
    『遺産を相続するためにパチンコ台を攻略する』
    というのが目的になって、
    ストーリーが動き始めたわけかー」
   
ぴこ蔵「主人公の明確な目的こそが『物語のエンジン』なのじゃ!」
   
ブンコ「じゃあ、ストーリーが始まったらすぐに事件が起こらないと
    読者はついてきてくれないんだねー。
    出来るだけ早く目的を明確にすることが作者の義務ってことか」
ぴこ蔵「おぬしの主人公は目的に向かって全力疾走しとるか?」


    ●主人公には苦難を与えよ
ブンコ「じゃあ『障害物』ってゆーのは何?」
   
ぴこ蔵「これが人間の不思議なところなんじゃが、
    いくらすごい目的を設定しても、
    あまりにも事が順調に運んでは
    ちっともドラマチックには感じないのじゃな」
    
ブンコ「そういえば、例文(2)の主人公にしても、
    『負傷」『不利なルール』などの理不尽な危機が
    次々に襲いかかってくるからこそ
    ドキドキハラハラしちゃうわけだよね。
    確かに、これと言ったピンチもなしに目的が達成されたって
    読者にとってはぜんぜん面白くないもんねー」
ぴこ蔵「良いエンジンを積んだら、
    さらに物凄い悪路を走らねばならん。
    苦労しないと読者は前に進んでいる実感が湧かんのじゃ。
    いやはや、物語作りはサファリラリーみたいな作業じゃよ」
   
ブンコ「読者の興味をひきつけるためには、
    主人公を襲う苦難が必要だってことかー!」
   
ぴこ蔵「『障害物』とはまさにそのことなんじゃよ!」


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面白い物語創作講座 基礎編06 ドラマチックにする要素

●ドラマチックにする要素
ブンコ「ほんじゃーさー、どんな話ならドラマがあるの?」
   
ぴこ蔵「パチンコの話が出たんで、これを素材に使ってみるか。
    実例(2)。こんなストーリーならどうかな?
   
  
★★実例(2)
   
  パチンコ台には巨大な龍が描かれていた。
  その両眼は主人公をにらみつけている。
   
  『この台を攻略した者に全財産を遺す』という遺言に従って
  自分を勘当した亡き父が遺したパチンコ台に立ち向かう主人公。
   
  固唾を飲む一族郎党の前で公開勝負をする日の直前、
  主人公は暴漢に襲われ手首を負傷する。
   
  激痛に耐える主人公の前に現れたのは、
  最大のライバルである実の兄だった。
   
   
  兄は主人公と父親の確執を暴き、
  お前にパチンコをする権利はないと言う。
  思わず感情的になった主人公は
  「たった10発の持ち玉で勝負する」という過酷なルールを
  呑んでしまう。
  
  勝負が始まり、傷はうずき、玉は減ってゆく。あと4発、3発。
   
  痛む手にラスト2発の玉を握りしめた時、
  昔、亡き父がよく歌っていた歌が店内に流れた。
   
  その瞬間、
  今は亡き父の思い出とともに一つの言葉が主人公の脳裏に甦った。
   
   
  「画竜点睛」。
   
  パチンコ台に描かれた巨大な龍。撃つ者をにらみつけるその両眼。
   
  「そうか!わかったぞ!親父!」主人公は最後の気力を振り絞り、
  痛む手首を極限まで回す。
  そして2発の玉が目にも留まらぬ速さで一気に打ち出された!

ぴこ蔵「どうじゃな? ↑の例は?
    急ごしらえなんで設定がいい加減なのは大目に見てくれ。
    ビッグ錠&牛次郎みたいでいい感じじゃろ?(笑)」
ブンコ「少年漫画のオールドファンならうなずいてくれるかもよ。
    でも確かに、前の話に比べると、
    少しドラマチックな雰囲気になったよねー。
    なぜ?」
   
ぴこ蔵「そこじゃ! そこが秘伝のテクニックじゃ!
    誰もが簡単に作れる『物語のエンジン』があるのじゃ!」
ブンコ「えっ? すると師匠、ストーリーをドラマチックにするための
    特効薬みたいなものがあるということすか?」
ぴこ蔵「その通り! いいか、よく聞くのじゃぞ。
    物語を前に進めるには、2つの設定をする必要がある。
    それは『目的』と『障害物』なのじゃ!」


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面白い物語創作講座 基礎編05 物語をドラマチックにするために

●物語をドラマチックにするために


ぴこ蔵「お次のテーマは『ストーリーの基本形』!
    まあ、ストーリーのパターンと言っても相当あるし、
    その作り方に到っては星の数じゃ。
    決して誤解して欲しくないのじゃが、わしは、
    唯一絶対のストーリー製作法を教えるわけではないぞ。
    そんなことはあり得ない! 不可能じゃ!
    ただ、最低限これさえ知っておれば、
    少なくとも
    お主のストーリーが途中で道に迷うことはない。

    …という
    非常に実戦向けに簡略化した方法を伝授しようと思う。
    この方法を用いて、とにかくひとつでもいい、
    ストーリーのあらすじを最後まで作って欲しいのじゃ!
    一つ出来たらもう一つ。
    これを何度も繰り返すことによって、
    創作の要点が掴める。
    何事も経験、そして反復練習じゃ!
    アタマで考えてテクニックを選んでおるようではまだまだ。
    無意識にさまざまな技法を繰り出せるようになるまで
    とにかくあらすじを作りまくることじゃ!
    1日1あらすじ! これが目標じゃ!
    説明のために、あらすじの実例を2つ用意してある。
    それでは、よくある失敗例として、
    まずは実例(1)を読んでもらおうかの。
★★実例(1)
  パチンコ台には巨大な龍が描かれていた。
  その両眼は主人公をにらみつけている。
  主人公は今日も朝から暇つぶしにパチンコ屋で
  玉をはじいている。
   
  いくつになっても定職につかないことに腹を立てて
  自分を勘当した亡き父も、会社の帰りに
  よくこのパチンコ屋に通っていたことを思い出す。
  腹が減ったのでパチンコを中断し、近所の立ち食いそば屋で
  たぬきそばを食べていると、誰かに肩を叩かれた。
  振り向けば兄が立っていた。やはり暇そうである。
  仕事は休みかと問いかけると、兄はうなずいてそばをすすった。
   
  主人公は兄とパチンコ屋に戻って新しい台を探す。
  隣同士に座って顔見知りの男の噂話をした。
  その男は親が急死して家業の米屋を引き継いだのだ、
  と主人公が言った。
  「米屋もあれだけどコンビニ経営もいいよな」兄は言う。
  「実はリストラされちゃってさ。一緒にコンビニやるか?」
  
  突然の兄の申し出に主人公はどう答えてよいかわからない。
  相変わらず玉も出ない。
  最後の玉が無くなった時、
  昔、亡き父がよく歌っていた歌が店内に流れた。
   
  その瞬間、
  今は亡き父の思い出とともに一つの言葉が
  主人公の脳裏に甦った。
  「兄貴を見習って就職しろ」
  主人公はタバコが吸いたくなる。
  しばらく止めていたタバコを兄からもらって火をつける。
  どうってことはない、またひとつ禁煙が終わっただけだ、と思う。
  パチンコ台の龍は主人公を叱るかのようににらみつけている。
   
  主人公は「別に何でもいいけどな、俺の方は」と呟いた。

 ぴこ蔵「どうじゃな? ↑の例は?」
 ブンコ「うっわ~。やる気ないっつーか退屈っつーか
     本当に何も変わんないなー。
     でも、よく見かけるんだよよねー、こんな感じのハナシ」
 ぴこ蔵「パチンコしてそば食ってタバコ吸っただけじゃからなあ」
 ブンコ「『俺、小説書いたんだけど、読んでくれない?』とか言って
     こういうの読ませられたことあるんだけどさー。
     悪いけど正直たまんなかったっす。
     こんな話を聞いても「ドラマチックねえ」とは思わないよねー」
   
 ぴこ蔵「つまり、誰とも対立しないこんな話にはドラマがないんじゃ。
     これではいつまでたっても物語が動き出さん。寝たきりじゃ」


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2008年1月3日木曜日

面白い物語創作講座 基礎編04 「対立」は物語のエンジン

●「対立」は物語のエンジン

ぴこ蔵「それでは『対立』の実例として
    「会社に遅刻したOLと上司との会話」を書いてみよう。
    ただし、ポイントとして
    『この会社では電車の事故で遅れた場合は証明書が必要』
    ということを絶対書かなければならないと決めておこう。
    ま、対立を避けて平穏に会話するとこんな感じじゃろう」
     ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
上司「おや、どうしたの? 遅刻?」
OL「すみません! ちょっと忘れ物して1本遅いのにしたら
   今度はその電車が事故で遅れてしまって…」
上司「30分ね。まあしょうがないよね。
   たまにはこんなこともあるさ」
OL「何か証明する書類とか提出したほうがいいですか?」
上司「事故のせいだし僕は別にいいんだけどさあ。
   ただ最近ちょっと管理の件で上がうるさくってね、
   ま、念のためってことで、
   悪いけど駅で証明書もらっといてよ」
OL「はい、わかりました。お昼休みに行ってきます。
   申し訳ありませんでした。以後気をつけますから」
上司「はいはい。よろしく」

     ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ブンコ「なんかこんな会話、別に書くほどのもんじゃないですよね」
ぴこ蔵「どうやってもこれ以上はふくらまないしな。
    そこで、軽くギャグ風に対立させるとこうなる」


     ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
上司「おい、遅刻してきて挨拶なしか?」
OL「だって電車の事故ですから」
上司「こっちは別に電車で来てくれって頼んだ覚えはないぞ」
OL「じゃあタクシー代、課長が出してくれるんですか?」
上司「そういうことを言ってるんじゃないだろ!」
OL「わかりましたよ。駅で証明書もらってくればいいんでしょ」
上司「なんだよお前、態度悪いぞ」
OL「お前なんて言わないで下さい。私は課長の奥様じゃないんです。
   まあ、奥様にはお前なんて言えないと思うけど」
上司「言ってるよ」
OL「あら、じゃあこないだの飲み会でセクハラしたこと
   奥さんにはまだバレてないんですねえ」
上司「あ、それは違うんだ。誤解、誤解なんだよ」
OL「フン」

     ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★




ぴこ蔵「ちょこっと対立させるだけでテンションが上がる。
    読者も「おや?」と集中するし、
    伝えたい情報の他に
    「次はどうなる?」の要素が入ってくる。
    つまり、
    いろんな情報が隠しやすいのじゃ」
ブンコ「情報を隠すってどういうこと?」
ぴこ蔵「例えばこの『駅で証明書をもらう』というのが
    重要な伏線だとする。
    ところが、この時点では
    読者にそのことを気づかせたくない。
    そんな時、
    OLと上司の関係に目を向けさせてしまえば
    読者の意識はそちらに流れてしまうのじゃ」
ブンコ「実例だとよくわかるねー。
    退屈になりそうな部分には「対立関係」を持ち込むと
    緊張感も出るしテンポもいいし。
    登場人物のキャラも立って
    ずいぶん面白く説明できちゃうんだなー…」
  
ぴこ蔵「ドラマとは
    主人公が他の登場人物と対立することで生まれる。
   
    さて、それでは主人公は、
    いったい誰と、何のために対立するのじゃろうか?
   
    実はそこには、お主の物語を一気に走り出させるための
    『物語のエンジン』が隠れているのじゃ!」
     
ブンコ「ドラマとは、
    主人公が他の登場人物と対立することで生まれる。
    …なるほどなー!」


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面白い物語創作講座 基礎編03 「葛藤」は「対立」じゃ!

●「葛藤」は「対立」じゃ!


ブンコ「えっと、面白い物語って例えばどんなの?」
ぴこ蔵「まず、その逆を考えてみようか。
    『誰も楽しめない話』があるとすれば、
    それは例えば、朝礼の時の校長先生の長話じゃ」
ブンコ「げっ、それ聞いただけでもう貧血気味だ!」
ぴこ蔵「退屈じゃからなー。サスペンスもないし、ロマンスもない。
    大体結論もわかっておるし、ギャグも言わん」
ブンコ「その上、お説教されるんだもんなー」
ぴこ蔵「この手の話と対極にあるのが「面白い物語」じゃな。
    ドキドキはらはら、次はどうなるの?
    あの人は誰のことを愛しているの?
    そんな一瞬たりとも気が抜けない話じゃ。
    手っ取り早く言ってしまえば、
    それは『ドラマチックなストーリー』のことじゃな」
ブンコ「ドラマチックって具体的にどういうこと?
    どうすればドラマチックになるのさ?」
   
ぴこ蔵「小説とかシナリオの書き方を解説した本を読むと、
    『ドラマとは葛藤である』と書いてあるのを
    お主もよく目にするはずじゃ。
    つまり、物語をドラマチックにするためには
    『葛藤』とやらを持ち込めばええのじゃ」
   
ブンコ「『葛藤』とか言われたって全然わかんないよー。
    画数の多い漢字を見ると、頭がぼやーっとしてくるんだよねー」
   
ぴこ蔵「そうか。するとお主、
    『主人公の成長や変化の過程における葛藤を書け!』
    なんて言われると頭がフリーズしてしまうじゃろな」
   
ブンコ「もうサイアクー!
    なんか葛藤って夏休みの朝顔観察っぽいよねー」
   
ぴこ蔵「いいところを突いたぞ!ちなみに辞書を引いてみると…
        ------------------------------------
    【葛藤(かっとう)】
     〔もつれ合う葛(かずら) や藤の意から〕
   
     (1) 人と人とが譲ることなく対立すること。争い。もつれ。
     (2) 〔心〕 心の中に相反する欲求が同時に起こり、
      そのどちらを選ぶか迷うこと。コンフリクト。
     (3) 禅宗で、解きがたい語句・公案、また問答工夫の意。   
     -------------------------------------
    まさしくもつれあうツルとツタのことじゃ。
    ありゃりゃ、禅問答まで出てきおったぞ。
    葛藤と言う概念はどうも抽象的で扱いにくいんじゃのう」
ブンコ「葛藤ってさー、意味ぐらいはわかるけど、
    視覚的にイメージしづらい言葉だよね。
    なーんか4畳半で一人ぐじぐじ反省するって感じだし」
ぴこ蔵「確かに葛藤のヴィジュアルはなかなか思いつかんなあ」
   
ブンコ「だいたい、主人公が葛藤する様子なんて
    どうやって描写すればいいのさ?
    髪の毛をかきむしりながら独り言でもゆーのか?
    口元をゆがめて手も少し震わせてやろーかなー。
    違うなー。そーゆーことでもないなー。
    ポーズかな? 
    腕を曲げて腰に当ててクイクイッと。
    そんな葛藤はやだなー。
   
    こりゃいかん。無理だ無理だ。
    あたしに主人公の葛藤なんて描けないよ。
    老師、またしても頭がぼやーっとしてきた」
ぴこ蔵「それは、一人で葛藤すると思うから難しいんじゃよ。
    心理描写しようなどと思ってはいかんぞ。
    ありゃつまらん。エンターテインメントで「内部の葛藤」は止めたほうがイイ。
    特に、映像化を考えておるのならおすすめできん。
    名手ならともかく、おぬしがやっても
    読者に迷惑かけるだけなのじゃ。
    こんな時、よいこは頭を使うのじゃ。例えば…
    人と人とが争う様子を書くのはイメージしやすいじゃろ?
    内面の葛藤も擬人化すればいいのじゃ
    誰か主人公が葛藤する相手を登場させればいい。
    考え方をこう変えてみるのじゃ!
   -------------------------------------------------------------------
   「ドラマとは主人公の葛藤から生まれる」
     
       ↓↓↓↓↓↓↓↓↓
   「ドラマとは主人公が他の登場人物と葛藤することで生まれる」
   -------------------------------------------------------------------
ブンコ「うーん、まだ「葛藤」の意味がわかりにくいな」
   
ぴこ蔵「ならば、お主にもわかりやすい言葉に置き換えてみよう。
   
    それは辞書の中にも出てくる「対立」という言葉じゃ。
    すると、こうなる。
 
----------------------------------------------------------
       ↓↓↓↓↓↓↓↓↓
   「ドラマとは主人公が他の登場人物と対立することで生まれる
   
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ブンコ「なるほど! ってことはつまり、
    手っ取り早く話をドラマチックにしようと思ったら
    主人公を登場人物とケンカさせればいいわけだ。
    でも、ホントかなあ?」
ぴこ蔵「嘘だと思ったら、ちょっと小手調べに、
    うまく会話がはずまないところを
    思い切ってちょっとケンカ腰の会話にしてみるのじゃ」
ブンコ「どんな感じかやってみてよ」

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基礎編02 何はなくとも「どんでん返し」

●何はなくとも「どんでん返し」

ぴこ蔵「書きたい物語のイメージをすでに持っているなら、
    『あっと驚く結末』を作るためには
    まず、おぬしの物語イメージに合わせた
    『どんでん返し』を作ることじゃ!」
     
ブンコ「どんでん返し?
    あの『なんとかサスペンス劇場』とかで
    最後に意外な犯人が出てくるやつ?」
     
ぴこ蔵「まあ、あんまり意外ではない場合がけっこうあるけど(笑)
    基本的にはそういうことじゃ」
ブンコ「だって老師、それじゃ
    『サスペンス劇場』用の作品しか
    できないじゃん」
     
ぴこ蔵「とんでもない思い違いじゃな。
    ミステリー、サスペンスは言うに及ばず、
    恋愛、ホラー、アクション…。
    どんなジャンルの物語にも、
    どんでん返しが隠れておる。
    それどころか、大前提なのじゃよ。
    むしろ、
    人はどんでん返しを読みたいがために
    小説を読むのじゃ。
    どんでん返しがなければ、
    面白いとは思ってくれん」
ブンコ「本当ですかあ?」
ぴこ蔵「少なくとも
    エンタテインメントの要素を持つ物語なら
    どんでん返しは必ず必要じゃ。
    事実を伝えることに意味があるノンフィクションとか、
    あるいは哲学的な思索を繰り広げる高邁な思想書なら、
    確かにそんなものは関係あるまい。
     
    しかし、エンタテインメントはそれでは許されんぞ。
    面白くなければ娯楽としての存在価値がないのじゃ。
    人間とは、薬がどんなに苦くても文句を言わんが、
    ケーキが期待していたより甘くないと怒り出す生物じゃ」
ブンコ「どんでん返しがあるとどうなの?」
     
ぴこ蔵「どんでん返しが提供するのは、
    信じていた世界が一瞬で大逆転する衝撃じゃ。
    予測可能な展開だったはずなのに、
    あっという間に何もかもが姿を変える。
    頭の中は真っ白。アドレナリンとドーパミンが駆け巡る
    至上のびっくり体験なのじゃ!」 
ブンコ「それは確かに自分の作品にどんでん返しが入ってたら
    面白いよねー…。ちょっと興奮するなー」
     
ぴこ蔵「さて、やっとこれでスタート地点に辿り着いたのじゃ。
    次回からいよいよ、誰も教えてくれなかった
    『面白くてたまらないストーリー作り』のための
    具体的なテクニックについて説明をはじめられる。
     
    つまり、突き詰めれば『どんでん返しの秘法』じゃ!」
ブンコ「いや、でも、ぴこ蔵師匠。
    あたしみたいな素人にどんでん返し作れったって、
    いきなりそれって難しくないかねー?
    もっとこう、地味で堅実な文章修行とか…」
ぴこ蔵「いやいや、お主が一番最初にやらねばならんのは
    派手な『どんでん返し』の作り方を覚えることじゃ。
    そうすれば、物語作りはあっという間にプロ並みじゃ。
    なぜなら、どんでん返しこそが全てを決めるからじゃ」
ブンコ「どんでん返しが全てを決める????」
ぴこ蔵「その通りじゃ。結末、伏線、オープニング、全てを決める。
    難しい、複雑そう、というのは思い込みに過ぎん。
    どんでん返しには簡単な作り方があるのじゃ!」
ブンコ「そ、それを早く教えてくでーっ!」
ぴこ蔵「ではその『どんでん返し』の構造を理解するために
    面白い物語はどうやって出来ているのかを見てみよう!」


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2008年1月2日水曜日

謹賀新年なのじゃ!

2008年 明けましておめでとうございます

旧年中はたいへんお世話になりましてまことにありがとうございました。

さて、ぴこ山ぴこ蔵の運営する「あらすじ.com」は
現在、mixiや楽天を始めいろいろな日記やブログを持っています。

ところが、その数が多くなりすぎましてですなー(T_T)
どれを更新したのやら、どのネタをどこに書いたのやら
わし自身にもさっぱりわからなくなってしまいましたのじゃ。

そこで、全部をこの「ぴこ蔵Blog」に統合しようと思います。

デザインの腕前も全く向上しないので
あらすじ.comのHP上のコンテンツもできるだけこのブログに複製して
すっきり閲覧していただけるようにします。

当分、記事の移動でドタバタ更新したりしますが
「何だこれ、新ネタラッシュかと思ったら
 どこぞで読んだ記事と同じやつじゃん!」と
呆れないでくださいまし。うひょひょひょひょい!

もちろん新しい発見や実験もどんどんアップしますので
ご期待ください!

また、ブログではうまく出来ないこともありますので
従来のホームページのほうも併せまして
今年もあらすじ.comをよろぴこお願いします!